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同志社大学アメリカ研究所 部門研究

部門研究

研究所では、常時、5〜8部門にわたり、研究所の特色を生かした活発な研究活動が行われています。これらの研究成果は、研究所が発行する定期刊行誌『同志社アメリカ研究』と『同志社アメリカ研究別冊』などで発表されるほか、単行本、シンポジウムやセミナーなどでも共有されています。

同志社大学アメリカ研究所部門研究(2024〜2026年度)

部門研究1

研究テーマ

環大西洋奴隷貿易の展開と知識人たちの文化的視座についての研究——歴史と記憶の表象

"Resonating Voices Across Continents: Exploring the Transatlantic Slave Trade, Revolts, Abolition, and Cultural Perspectives of Intellectuals"

代表者 白川 恵子(文学部)
概要

本研究は、17世紀から19世紀にかけて展開された環大西洋奴隷貿易に関連する諸事象を多角的に分析するとともに、北米英領植民地および西インド諸島における奴隷制度の実態や各所で頻発する奴隷叛乱事件が、アメリカ植民協会の動向、ひいてはアンテベラム期の政治的指導者たちの施策にいかなる変化をもたらしたのかを検討するものである。また1619年論争を合衆国における人種政策や記憶を巡る言説構築から再考し、歴史記述と文学表象との相克を探る作業も、本研究の主要課題の一つとなるだろう。数世紀に及ぶ大西洋カリブ海地域の英領植民地および合衆国での奴隷制の展開が、一見すると人種的表象とは直接関連がないように思われるポストべラム期、ないしは19-20世紀末転換期以降の知識人たちの著述にどのような影響を与えたのかについても考察したい。

部門研究2

研究テーマ アメリカ連邦最高裁とアメリカ社会
代表者 松本 哲治(司法研究科)
概要

本研究は、アメリカ合衆国連邦最高裁判所(以下、「アメリカ最高裁」とする)の主要な判決を、法的側面からのみならず、その歴史的・社会的・経済的・政治的側面から分析・検討することで、その時々の時代において、アメリカ最高裁の判決がどのような意義を持ったのかを明らかにするとともに、その時代においてアメリカ最高裁が判決を通じてどのような役割を果たしたのかを解明しようとすることを目的とする。
アメリカでは建国以来、連邦政府の役割、奴隷問題、ニュー・ディール政策等、重要な問題の多くは憲法解釈に関する問題であった。そして、その問題に対処する際に、アメリカ最高裁の判決が大きく影響してきた。しかし、近年では、アメリカ最高裁の「保守化」が指摘され、その最高裁が国論を二分する論点について判決を下すことに対する批判の声も大きい。
そこで本研究では、各研究者が、様々な時代のアメリカ最高裁の判決(そして最高裁それ自体)がその時代のアメリカ社会において果たした役割を検討することで、アメリカ最高裁が、アメリカ社会において果たしてきた役割の変化を明らかにすることを目的とする。

部門研究3

研究テーマ Historical Studies of the Transient Subjects/Unsettled Settlers in the Transpacific World from the Mid-19th Century to the 20th Century
代表者 和泉 真澄(グローバル地域文化学部)
概要 本共同研究では、19世紀後半から20世紀にかけての日本と北米の歴史を複眼的に視野に入れつつ、一定の場所にとどまらなかった人物や、一時期存在したがその後継続しなかったコミュニティなどの歴史的事例を集めることによって、これまで近代国民国家を中心軸に据えた日本史、北米史では捉えきれなかったトランスパシフィック世界の人間の活動や生存戦略、繰り返される移動、国境を超えて想起される文化共同体や国内の敵として破壊されるコミュニティなどの歴史を動的に掘り起こす。ポストコロニアル研究の成果を踏まえつつも、近代の進展のなかで生きた人間が、国家を超えたつながりや生活圏を築いたり、あるいは一つの国家の下で国家以外のアイデンティティに基づくコミュニティを想起したりする具体的事例を見つけ、国家が逸脱と考える主体の曖昧なアイデンティティやカテゴリー化を拒む入植地が歴史のなかで消えていった経緯から見える近代の創出とその中で強制や支配に抗いつつ、生きる空間を見つけようとした人々の活動を、地道な実証研究から帰納法的に考察する。

部門研究4

研究テーマ フェミニスト映画の歴史――アメリカにおける制作と上映を中心とした国際比較
代表者 菅野 優香(グローバル・スタディーズ研究科)
概要 女性参政権運動を通じてフランスで再発明されたフェミニズムは、イギリスやアメリカで瞬く間に広まり、女性の自由、権利、平等を求める思想、実践として発展してきた。本研究は、フェミニスト文化運動のなかでも、とりわけ映画が果たしてきた役割に焦点を当てて共同研究を行う。19世紀末の女性参政権運動に端を発する近代のフェミニズムと映画は、互いに強い影響を与えながら発展してきたが、そうした結びつきを可視化し、強化してきた重要な契機が「女性映画祭」であった。本研究では、アメリカを中心に、今日にいたるまで各地で開催されてきた女性映画祭というフェミニスト的文化実践の歴史とともに、その現代的意義を問う。女性映画祭を軸に、クィアおよびフェミニスト運動と映画との関係を歴史的かつ理論的に考察し、国家の枠組みを超えて構築されるトランスナショナルなクィア・フェミニスト映画文化の可能性を探るのが本研究の目的である。

部門研究5

研究テーマ 日米同盟に関する「統治の不安」と有権者の政治意識・行動
代表者 池田 謙一(社会学部)
概要

本研究の目的は日本を事例に、①緊迫する国際情勢の変化により有権者の安全保障政策に対する選好がどのように変化するのか、さらに②それがどのように選挙での有権者の投票行動に結びつくのか明らかにすることにある。

①について先行研究では、安全保障上の脅威の高まりを認識した国家の行動についての理論的・実証的研究が主にバランシング/バンドワゴニングの枠組みで進んでいるものの、それらはすでに大国との同盟に安全保障を依存する国家の有権者が脅威を感じたときどのように安全保障政策選好の形成するのか、つまりどのような場合に同盟を維持・強化しようとするのか、それとも同盟に依らない別の安全保障政策を志向するようになるのか、という問いに必ずしも答えるものではない。また②について先行研究では、理論的にタカ派/ハト派に分類される安全保障選好が投票行動に与える影響については検証されているものの、安全保障政策は多様であり、さまざまな安全保障政策への選好が投票行動に与える影響を検証する必要がある。

そこで本研究では、近年、中国の脅威の高まりに直面する一方、同盟国アメリカの防衛コミットメントに対する有権者の信頼が低下している日本を事例に、①すでに同盟関係をもつ国の有権者の安全保障政策についての選好を「忠誠」、「ヘッジング」、「離脱」の3つのカテゴリに理論的に分類し、中国に対する脅威認識とアメリカのコミットメントへの信頼の低下がそれらに与える影響について検証する。さらに、②政党の立場を「見捨てられるリスク」重視/「巻き込まれるリスク」重視、「リアリズム」/「リベラリズム」の2つの軸で理論的に分類し、有権者の多様な安全保障政策への選好が各政党への投票に結びつくメカニズムについて検討する。そしてこの理論的枠組みから導出した仮説をオンラインでのサーベイ実験を用いて検証する。また、同盟関係があることに起因して自国が戦争やテロに巻き込まれるような統治のミスが起きるのではないかという「統治の不安」が、有権者のさまざまな政治意識(例えば、政治信頼、政治的有効性感覚、政権支持態度)および政治行動(例えば、投票参加、政治的関与、投票選択)に与える影響について検証する。

 本研究は、上述の先行研究の穴を埋めるのみならず、国際安全保障論と政治行動論とでそれぞれ別々に研究されてきた課題を融合し、国際安全保障上の脅威の高まりが選挙結果に結びつくメカニズムを解明するという点でも学術的重要性をもつ。

部門研究6

研究テーマ アメリカの分極化の実相と帰結――国際環境との相互作用
代表者 村田 晃嗣(法学部)
概要

本研究の目的は、アメリカ政治・社会の分極化の実相と分極化のアメリカの各種政策への影響を、国際環境との相互作用の観点から考察することで、分極化によりアメリカのパワーは衰退しているのかを議論することである。

アメリカの政治や社会に関して、分極化しているとの言説が勢いを増している。分極化が問題視される背景には、この現象が、アメリカの「パワー」の減衰に繋がり、さらにはその影響が世界各国に波及しうるとの問題意識がある。しかしながら、論理的に考えて、分極化がアメリカのパワーの衰退に必然的に直結するわけではない。

分極化の現象をより精緻に議論するためには、分極化の実相と、その帰結を分けて考察する必要がある。そのために、本研究は以下の2つの問いを設定する。 ① どのような分極化が、なぜ生じているのか。 分極化の要因は何か。国際環境や国内環境の変容は、分極化とどのように影響し合っているのか。②分極化は、アメリカの各種政策および国際環境にいかなる影響を及ぼしているのか。これらの影響はアメリカの衰退といえるのかどうかを議論する。

部門研究7

研究テーマ 冷戦と性暴力一北東アジアの米軍駐留とインターセクショナル・フェミニズム
代表者 秋林 こずえ(グローバル・スタディーズ研究科)
概要 本研究は、冷戦は構造化された軍事的性暴力に支えられたシステムと考えられるのではないかという問いに取り組む。その検討のために、沖縄と韓国での駐留米軍による性暴力の実証研究 と処罰に関する法の運用を日米地位協定・韓米地位協定のポリティクスを中心に分析し、軍事的性暴力がどのように構造化されているか明らかにすることを試みる。また、現在も継続している朝鮮戦争によって長期駐留軍がどのように社会的・政治的に容認され、構造化されているかを島嶼フェミニズムの視点から明らかにすることを試みる。

部門研究8

研究テーマ 宗教からみるアメリカ社会:信仰実践の変容と政治的・社会的活動
代表者 関谷 直人(神学部)
概要
 本研究は、宗教の視点から現代のアメリカ社会を分析すること、また、信仰実践者の政治的ならびに社会的活動を通して、世俗化時代の宗教実践の在り様について考察することを目的としている。世俗化した現代社会においては単に「宗教」と「世俗」という二項対立だけでは、宗教実践の現実を説明することは難しい。また、「文化戦争」による分断が加速していると理解されている現在のアメリカにおいて、気候変動や人工妊娠中絶をめぐる解釈は、「宗教リベラル」と「宗教保守」のあいだでも溝を深めている。本研究では、特にキリスト教やユダヤ教の中で、人種やジェンダー、セクシュアリティによって「マイノリティ」として周辺化されてきた人々の信仰実践と諸活動の関係について具体的事例を収集すること、加えて、クリスチャン・ナショナリズムの近年の動向の分析を通して、現代アメリカ社会が抱えている分断の諸相の一端を明らかにすること、アメリカの「ユダヤ・キリスト教的伝統」の拡張の可能性と課題について考察することを目指す。
公開講演会
部門研究
コロキアム